ものもらい

ものもらいの基礎知識

ものもらいとはどんな病気?

ものもらいとは、まぶたに起こる腫れや赤みをともなう炎症性の病気です。医学的には「麦粒腫(ばくりゅうしゅ)」や「霰粒腫(さんりゅうしゅ)」と呼ばれます。

主に、まつ毛の根元やまぶたの脂を分泌する部分に細菌が感染することで腫れが生じます。痛みをともなう場合や、しこりだけが残るタイプなど、症状や原因により種類が分かれます。

麦粒腫と霰粒腫の違い

麦粒腫は細菌感染によって起こる急性の炎症で、まぶたが赤く腫れ痛みや膿をともなうのが特徴です。一方、霰粒腫はマイボーム腺という脂の出口がつまってできる慢性的なしこりで、通常は痛みが少なく感染を伴いません。
見た目が似ていることもありますが、治療法が異なるため、自己判断するのではなく眼科での正しい診断が必要です。

子どもと大人で違いはある?

子どもはまばたきの回数が少なかったり、目をこする癖があったりすることで細菌感染が起こりやすく、麦粒腫を繰り返す傾向があります。一方、大人ではまぶたの脂の分泌バランスが崩れやすく、霰粒腫ができやすい傾向があります。

どちらも放置せず、早めの治療が大切です。

ものもらいの主な症状と見分け方

麦粒腫の症状

粒腫は、まぶたの一部が赤く腫れ、押すと痛みを感じます。まつ毛の根元に小さなできものができ、数日で膿がたまることもあります。
涙が出たり、目やにが増えるといった症状が伴う場合もあったり、急にまぶたが腫れ、痛みを伴う場合は麦粒腫の可能性が高いです。

霰粒腫の症状

霰粒腫は、まぶたの内側にコロコロとしたしこりができる病気です。痛みや赤みはあまりなく、徐々に腫れが目立ってきます。
炎症が強くなると、まれに痛みや発赤が出ることもありますが、多くは見た目の異変だけで気づかれることが多いです。

自己判断との違いに注意

ものもらいは見た目が似ているため、自己判断で治療すると症状を悪化させることがあります。麦粒腫なのに放置したり、霰粒腫に抗菌薬だけを使っても改善しなかったりすることもあります。
正確な診断と適切な処置のためには、必ず眼科を受診し、専門医の判断を仰ぐことが大切です。

ものもらいの原因と発症リスク

主な原因

麦粒腫の主な原因は、まぶたにある皮脂腺や汗腺への細菌感染です。特に、黄色ブドウ球菌が多く、まつ毛の根元から侵入して炎症を起こす店が特徴です。
一方、霰粒腫はマイボーム腺という油分を分泌する腺がつまることで生じます。細菌感染ではなく、分泌物の停滞が原因とされ、慢性的に現れることもあります。

発症を助長する生活習慣・環境要因

以下のような習慣や環境は、ものもらいのリスクを高めます。

  • ・目をこする
  • ・汚れた手で触る
  • ・コンタクトレンズの不適切な管理
  • ・睡眠不足や疲労の蓄積
  • ・アイメイクの落とし残し
  • ・花粉やほこりが多い環境での生活

これらはまぶたの衛生状態を悪化させ、炎症や詰まりを起こしやすくします。

感染性はある?周囲にうつる可能性

麦粒腫は細菌感染が原因であるため、まれに周囲へうつる可能性があります。ただし、通常の生活では強い感染力はありません。
手指やタオルなどを清潔に保ち、目に触れるのを避けることで周囲への感染リスクはほとんど防げます。霰粒腫は感染性がないため、他人にうつる心配は基本的にありません。

ものもらいの検査と診断

診察の流れと問診内容

眼科での診察では、まず目の状態を観察する視診が行われ、まぶたの腫れ・赤み・膿の有・しこりの大きさや位置などを確認します。加えて、以下のような内容について問診が行われます。

  • ・症状が出始めた時期と経過
  • ・痛みやかゆみの有無
  • ・視力への影響
  • ・コンタクトレンズや化粧品の使用状況
  • ・以前にも同様の症状があったかどうか

これらを総合的に判断して麦粒腫か霰粒腫か、あるいは他の疾患かを診断します。

重症化のサインや他の病気との区別

通常のものもらいは自然に治ることもありますが、以下のような症状がある場合は重症化している可能性があります。

  • ・発熱を伴う
  • ・まぶた全体が大きく腫れる
  • ・膿がたまって痛みが強い
  • ・数日たっても症状が改善しない

また、霰粒腫と似た症状を示す眼瞼腫瘍などの病気もあります。痛みがなくても長期間しこりが残る場合、念のため眼科で精密な検査を受けることが大切です。

ものもらいの治療法と日常ケア

点眼薬・内服薬での治療

麦粒腫の場合は、主に細菌感染が原因のため、抗菌作用のある点眼薬や軟膏が処方されます。炎症が強い場合には、補助的に抗菌薬の内服が必要になることもあります。

霰粒腫は炎症が落ち着いていれば経過観察となる場合もありますが、炎症がある場合は同様に点眼薬などです。いずれも、医師の指示通りに薬を使い続けることで、悪化を防ぎながら自然治癒を促します。

切開や手術が必要になる場合

膿が溜まりすぎて痛みが強くなっている麦粒腫では、外来で小さな切開を行い、膿を出す処置が必要になることがあります。霰粒腫でしこりが残り、長期間改善しない場合には、局所麻酔下での摘出手術が検討されます。

切開は通常短時間で済み、痛みも軽度ですが、再発防止のためにも処置後のケアが重要です。

自宅での温罨法・清潔管理

自宅では、まぶたを温める温罨法(おんあんぽう)が有効です。清潔なタオルを温かいお湯で濡らし、まぶたに5〜10分当てることで血流を促進し、膿の排出を助けます。

また、目をこすらない・化粧を控える・タオルや洗顔用品を家族と共有しないなど、清潔を保つことも大切です。コンタクトレンズの使用は中止し、治癒後も衛生管理を徹底することで再発予防につながります。

ものもらいの再発予防と注意点

まぶたを清潔に保つコツ

再発を防ぐには、まぶた周りの衛生を保つことが基本です。朝晩の洗顔時に、まつ毛の生え際を丁寧に洗うと、皮脂や汚れの詰まりを予防できます。

市販のまぶた専用洗浄シートやベビーシャンプーを薄めたものを使って洗うのも効果的です。汗をかいた後や化粧を落とす際も、目元を優しくケアすることがポイントです。

コンタクトレンズ使用時の注意

コンタクトレンズの使用は、手指の清潔を徹底し、レンズやケースの正しい管理を行うことが重要です。使い捨てタイプは毎回新品を使用し、再使用可能なタイプでは洗浄・保存を怠らないようにしましょう。

違和感があるときや、ものもらいの初期症状が出たときは、装用を中止し眼科を受診してください。

頻繁にできる場合の対策

ものもらいが繰り返しできる場合は、まぶたのマイボーム腺機能に問題があることも考えられます。慢性炎症や皮脂分泌異常が関与していることもあるため、眼科での診察と継続的なケアが必要です。

医師の指導のもと、日常的に温罨法を取り入れたり、まぶたの洗浄を習慣にしたりすることで、再発の予防につながります。