日帰り硝子体手術

硝子体手術は、網膜や硝子体に関わる目の病気に対する治療法です。近年では医療技術の進歩により、入院せず日帰りで受けられるケースも増えてきました。

日帰り硝子体手術の基本的な仕組みや対象となる疾患、手術の進め方、術後に注意すべき点についてわかりやすく紹介します。

治療を検討している方や家族の目の健康を守りたい方にとって、有益な情報となるはずです。

日帰り硝子体手術とは?

硝子体手術の概要

硝子体手術は、目の奥にある透明なゼリー状の組織「硝子体」を取り除き、網膜の病変などを治療する外科手術です。専用の器具で硝子体を除去し、出血や膜の除去、網膜の修復などを行います。
近年では「極小切開硝子体手術(MIVS)」という傷の小さい方法が普及し、縫合の必要がなく回復も早いため、日帰り手術も可能です。視力の回復や失明予防に効果的な治療法です。

なぜ日帰りで可能になったのか

以前は入院が必要な手術でしたが、以下の技術的進歩により日帰り対応が可能となりました。

  • ・小切開・無縫合手術技術の普及
  • ・手術時間の短縮化
  • ・点眼麻酔・局所麻酔の確立
  • ・術後の回復管理の向上

対象となる主な疾患

  • ・網膜前膜(黄斑前膜)
  • ・黄斑円孔
  • ・硝子体出血
  • ・網膜剥離(軽症例)
  • ・糖尿病網膜症による硝子体混濁

手術の流れと所要時間

事前検査と診察

手術前には、網膜や硝子体の状態を確認するための詳細な検査を行います。主な検査項目は以下のとおりです。

  • ・OCT(光干渉断層計)検査:網膜や硝子体の断面を高解像度で画像化し、病変の深さや広がりを確認
  • ・視力・眼圧測定:現在の視力の程度や、目の内圧(眼圧)を測ることで、眼内環境の安定性を評価
  • ・散瞳検査:瞳孔を一時的に広げて、眼底全体を観察しやすくする検査
  • ・眼底写真撮影:網膜や視神経の状態を記録として残し、診断や経過観察に活用

これらの検査結果をもとに、医師が手術の可否やリスクについて丁寧に説明を行います。

手術当日の流れ

受付・術前準備

病院に到着後、受付を済ませたら術前説明を受けます。血圧や体温などの全身状態を確認し、点眼薬で瞳孔を開く準備をします。
局所麻酔を行うため、入院の必要はありませんが、当日は運転を控えましょう。

麻酔と消毒

手術は局所麻酔で行われます。点眼麻酔または注射による眼球周囲の麻酔を施し、痛みを抑えます。その後、顔周囲を消毒し、清潔なドレープ(布)で覆って手術に備えます。

硝子体手術の実施

眼球に0.5〜0.6mm程度の小さな切開を3か所ほど入れ、器具を挿入して硝子体を除去します。必要に応じて網膜の膜を除去したり、出血を吸引します。
手術時間は30〜60分程度が一般的です。

術後の処置と帰宅

手術終了後は点眼薬を使用し、眼帯を装着します。しばらく安静にしたあと問題がなければその日のうちに帰宅可能です。
医師から術後の注意事項や点眼指導を受け、自宅でのケアを開始します。

日帰り手術のメリットと注意点

日帰り手術のメリット

  • ・入院不要で身体的・経済的負担が少ない
  • ・手術後すぐに帰宅できるため精神的にも安心
  • ・感染リスクを抑えられる(院内感染の回避)
  • ・高齢者や介護が必要な方にも適している

日帰りで受けられないケース

硝子体手術は多くの場合日帰りで可能ですが、すべての症例が対象となるわけではありません。以下のような条件に該当する場合は、安全性を考慮して入院での対応が推奨されます。

  • ・重度の網膜剥離
  • ・全身疾患による麻酔リスク
  • ・自宅での安静維持が難しい環境
  • ・術後にガス注入が必要なケースで、うつぶせ姿勢が長期間必要な場合

特に、ガス注入後はうつぶせ姿勢を保つ必要があり、家庭内でのサポート体制が不十分だと回復に支障をきたすおそれがあります。医師が術前に全身状態や生活環境を確認し、最適な手術計画を医師と相談しましょう。

術後の経過と日常生活での注意点

術後の見え方と回復経過

手術直後はかすみ目やゴロゴロした違和感、まぶしさを感じることがありますが、これらの症状は通常数日から数週間で改善していきます。視力の回復速度や程度は、手術を受けた病気の種類や進行具合、網膜のダメージの程度によって異なります。 たとえば、網膜前膜など比較的軽度の疾患では早期の視力改善が期待できるでしょう。一方で、糖尿病網膜症や黄斑円孔のように長期間変化があった場合は、視力の回復に時間がかかることもあります。

日常生活での注意点

手術後の目は非常に敏感な状態です。順調に回復するためには、自宅での過ごし方にも十分な配慮が必要です。特に、術後1〜2週間は注意が必要な時期となるため、無理をせず、医師の指導に従って生活しましょう。
以下の点を意識すると、術後のトラブルを防ぎやすくなります。

  • ・術後1〜2週間は激しい運動や重いものを持つのを避ける
  • ・感染予防のため、処方された点眼薬を指示通り使用
  • ・目をこすらない・汚さないようにする
  • ・医師の指示に従い定期検診を受けることが大切

どれも簡単なことのように思えても、継続して意識することが大切です。些細な異変を感じた場合も、自己判断せず早めに受診しましょう。